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2022.1.07ちゃんと笑うこと

 爆笑問題カーボーイにゲストで出てきた鬼越トマホークが面白くて、それから彼らのYouTubeを見るようになった。 今日観てたのは、ウェストランドの井口氏が出てきて爆笑問題の魅力を語る会。 https://youtu.be/My-8SuBkt1w ここで爆笑問題が大御所レベルなのに良い意味で緊張感がなく、若手も気楽に一緒できるかについて、井口さんが「二人とも若手の話に本気で笑うから」と答えていたのが印象的だった。 笑いであれ学問であれ雑談であれ、ある程度歳の離れた後輩のそれを、自分はどこまで真剣に聞いているのだろうか。そういえば昨日のDOMMUNEでも、宮台先生は『カナルタ』の太田監督と割とガチ気味の喧嘩トークになりながらも、監督の主張は根気よく本気で聞いていた。もちろん、いろんな意味で計算されたものだとは思うけど、そういえば宮台先生は他の場所でも、学部生であれ高校生であれ、真剣に、儀礼的に聞いているわけでなく、ガチで聞いている姿が印象的だ。きっと爆笑問題の二人もそういうところが後輩芸人から好かれているのだろう。 翻って、僕の場合は儀礼的関心のケースが多いなと、ちょっと反省、そして内省した。真剣に聞くことからしか開かれない扉ってあるよね。

2022.1.05『ドント・ルック・アップ』感想:テクノユートピアンの描き方をどう捉えるか

 新年なので、どこまで続くかわからないが日々の感想等を日記代わりに箇条書き程度に。 ※コンテンツのネタバレあり。でも、ネタバレしても楽しめるはず。 Netflix『 ドント・ルック・アップ 』が話題なので観た。あらすじは簡単。トランプ的対立の時代を嘲笑する本作は、地球に彗星が衝突して人類が滅ぶことを突き止めた学者(レオナルド・ディカプリオ等)に対して、大統領(メリル・ストリープ)たちは本気にせず、あるいは本気にしても投票=人気取りに躍起になるため、適切な行動を取らないうちに彗星は地球に近づく...というもの。 興味深いのは、政権側に現れる企業バッシュのCEOピーター。おそらくピーターはピーター・ティールが由来か。とはいえ、作品のピーターはそれなりに高齢の、テクノユートピアンぽくない印象。 テクノユートピアンとは、『フォーリン・アフェアーズ・リポート』2021年12月号に掲載されていたイアン・ブレマー「地政学パワーとしてのビッグテック」で、ブレマーが分類したカテゴリー。 ①中国を代表とする権威主義国家のナショナルチャンピオン ②アメリカのGAFA:グローバリスト ③テクノユートピアン →イーロン・マスクや、最近のMETAのザッカーバーグが考えているメタバース+暗号通貨の世界もテクノユートピアンに近い。 テクノユートピアンは、テクノロジーの理想を追求すると素朴に捉えるならば、(ここから超ネタバレ)ラストに冷凍休眠+惑星到着後、裸のお偉方が(おそらく)みんな食べられる、というラストの描き方が、端的にテクノユートピアンの捉え方をやや露悪的に描いており、なんというか、稚拙さを感じた。 マスクは火星への植民を考えている(テスラで培ったEVは、ロケットに転用を考えているはず。多分誰かそういうこと言っているはず)。もちろん、ピーター・ティールとマスクを同列に扱っていいかは議論があるだろう。このあたり、いわゆる暗黒啓蒙関係の書籍を熟読していないので判断し難いが、一部の人々がテクノロジーを駆使して破滅から逃れようとする態度が、なんだか釈然としない。もうちょっとこのあたりの勉強しないとなあ。まあ、結末の食われる、という表現はテクノユートピアンへの批判なのでいいけど、正直つまらないなあと感じた。

思いのほか批評性のある映画だった『3D彼女』

ブログの更新が半年も滞っていた。たまには思ったことをちょこちょこと。 ■noteについて 先日出演したTBSラジオ『 文化系トークラジオLife 』のテーマは「課金」だったのだが、そこでnoteの話題になった(放送はリンク先でも、「ラジオクラウド」というスマホアプリでもきける)。 最近記事が話題になることも多い note だが、記事に課金したり、購読システムがある。共演の 海猫沢めろん先生もやっている のだけど、なかなかおもしろそう。 正直僕が課金しても一切儲からないと思うけど、購読者がいればそこに責任が生まれることもあり、強制的に何か考えていることを(気を張りすぎない程度に)書ける。ブログはほっとくとこうなるけど、かといってTwitterにながながと書くのもだるい。となると、自分の思考メモ代わり兼ある程度人様に見せられるレベルのものをnoteに書くのもいいな、と思った。ちょっと9月中に開設しようかと思う(誰か購読する人いるかな?)。 それはそうとして、本題。 先日、9/14日公開の映画『 3D彼女 』の試写会に行ってきた。一応メディアに携わっている身なので、ありがたいことにちょこちょこ試写会の招待状がきたりする。試写会が縁で『 ザ・キング 』という韓国映画のパンフレットに寄稿したこともある(やはり自由にかけると脱線しつつダラダラ書いてしまう)。 この『3D彼女』、漫画原作の10代向け恋愛映画ということで、ここ数年(いやもう10年近く?)続いてる若手俳優起用した例のやつか、と思っていた。そして僕はなんとなくアレルギーというか、こういう映画は子供だましで、見るのは時間の無駄だと思っていた。 しかし結論から言うと、映画は面白かった。ただし、一般的な意味での面白いとは別。 ■アニメを否定してアニメ化が進行する逆説? 公開前だし、業界のルールに詳しくないのでネタバレは極度に避けるけど(予めご了承ください)、簡単なあらすじを。主人公は冴えないオタク高校生で、ひょんなことから学校でも名高い美人のリア充と恋愛する、というもの。 作品を取り巻くオタクの表現は、戯画化のためとはいえちょっとなあ、というところもあるし、所々表現的に微妙なところが散見される。だけど、僕が興味深かったのはそこではない。 主人公のオタクはある意味でアニメから...

会話に注目が集まるIT業界[今週の気になったニュース][ラジオ元ネタ2018.2.20]

今回もラジオで話したニュースの元ネタなどをいくつか紹介。これまでニュース記事のタイトルとリンクを貼ってつけていたが、今回からはタイトルではなくてリンクと内容に関する説明を行うことにした(基本的に順不同)。 ①ZOZOTOWN のおまかせ定期便が開始 https://bouncy.news/9395 ・アマゾンも同様のことを考えているが、zozoスーツのメリットがあるので、zozoで買えば買うほど自分の好みやサイズに関しても知識が増えるという意味で、このサービスがかなり大きいと思われる。 ②ポルシェが旧式の車の部品を 3D プリンターで提供して作成して供給すると発表 http://gigazine.net/news/20180214-porsche-3d-printing/ ・古い家電や車など、小さなパーツは再び作るのが難しい。その、 3D プリンターであれば大量生産のための設備もいらない。 3D プリンターのメリットはこういうところにある。  ポルシェのような車だけでなく、多くの様々な小さい部品ができれば良いな。とはいえ 3D プリンターで銃を作るといった動きも昔からあるので、 3D プリンターでできることできないこと、あるいは「できてしまうこと」に関しての問題点について議論しなくちゃいけないでしょう。 ③番組でも何度も漫画の海賊版の話をしてきたが、どうやら漫画、特にコミックスの売り上げが大幅に落ち込んでいるということが明確になってきた。そこで漫画家協会は海賊版サイトを非難する生命を発表している。 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1802/13/news090.html http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1802/16/news061.html ・僕のような人文書等をメインとする書き手にとっては、コミックの売り上げが落ちれば ただでさえ売れない人文書に資金が回ってこなくなる可能性もある。その意味で、漫画の落ち込みは僕にとってもかなり問題なのだ。  音楽も十数年前同じように CD の海賊版が流行った。そこで音楽業界は、 10 年ほど前から Spotify のようなサブスクリプションサービスに移行した経緯があ...

ラジオ原稿元ネタ2018.2.13

① 顔認証メガネで旅行者をスキャン —— 中国、すでに7人を駅で逮捕 (ビジネス・インサイダー) こちらも https://media.dglab.com/2018/02/09-afp-02-2/  中国の顔認識技術はすごいもので、監視カメラもいたるところにある。 おそらく東南アジア等への輸出が目的。 ② Twitter、ついに初の黒字に (ITメディア) ③ 「QRコード」付きバレンタインチョコ出現か (ヤフーニュース個人) ・バレンタインはネタとしても、ビジネスの可能性が広がったのは間違いない。詳しくは放送きいてね。 https://www.tbsradio.jp/dc/ ④ 台湾の地震を受けた寄付金デマ 本人は誤り認め、謝罪「インターネットの怖さを痛感した」 (バズフィード) ・デマ、いくない。私刑、いくない(デマ拡散者が実際にどのような人物であれ。それは法が裁くから) ⑤ エストニアの「データ大使館」構想 国とは領土ではなくデータ (DC LAB HAUS) ・エストニアについては本も出て読んだ。 https://www.amazon.co.jp/dp/B01AXRCDZ4 ⑥ 元うたのお兄さんの「あたしおかあさんだから」が炎上するワケ (ヤフーニュース個人) ■番外編 ・ 21世紀最大のビジネスチャンス「ヘルスケア」に挑むAmazonの可能性 (ニューズウィーク) →個人的にすごく興味深かった ・ インテルのARグラスは眼鏡と見分けつかず 超小型で網膜投影 (moguraVR) ・ 学生ベンチャー育てる「N高起業部」 堀江貴文氏ら、入部審査で学生に酷評 (ITメディア) これからがんばっていただきたい。 今週はそんな感じ。

[荒川強啓デイ・キャッチ!]ラジオ元ネタ(2018.2.06)

『 荒川強啓デイ・キャッチ! 』。リンク先で音声きけます。 今週の元ネタ ① 末期患者の「余命」を予測する人工知能、スタンフォード大学が開発 (WIRED) ・こちらも https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180129-00010007-newsweek-int 原論文はこちら https://arxiv.org/abs/1711.06402  すべてが計算できる「ラプラスの悪魔」にも連なる問題だけど、放送で話したように、個人的には技術によって、わざわざ選択しなくてはいけないものが増えてしまったということが問題。  単に技術がない時代は、余命がわからない。だが知らないことを選択するという事は、「余命がわかるのに知らない」という選択をすること。これは端的に知ることや選択肢が増えることを喜べばいいわけではなく、知ることもできるのに知らないを選択するという意味で、心理的リスクを負う判断が増えたということ。その意味で選択肢の増加は人間を幸福にするだけじゃない。 技術哲学では、オランダの哲学者フェルベールが書いた『 技術の道徳化 』という本にも、こうした問題が最初に描かれている。非常に面白いのでオススメ。 ② 「日本eスポーツ連合」設立 国内団体を統合 プロゲーマーの条件は (ITmedia) ・以下も参考 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1802/01/news142.html https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20171215-00079312/ ・番組ではあまり扱わなかったけど、組織の設立については批判も結構多かったりする。そういう意味で業界内ではかなり議論されている問題。個人的には今後もウォッチしたい問題。 ③ 米IT大手3社 アップル・アマゾン・グーグル、好調 10~12月 (毎日新聞) ・詳しい記事はたくさんでてくる。いくつかリンク貼っておく。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26401370R00C18A2000000/ http://gigazine.net/news/20180202-amazon-q4-20...

[荒川強啓デイ・キャッチ!]ラジオ元ネタ(2018.1.30)

『 荒川強啓デイ・キャッチ! 』。リンク先で音声きけます。 今週の元ネタ ① AI製「有名女優のポルノ」が爆増 (GIGAZINE) ・いずれ何が人で何がコンピュータか、ますます区別がつかなくなるでしょう。先週Pornhubでスタジオが盛り上がったので、やや意図的に選んだ(笑) ② 枝野幸男氏が、草津白根山の噴火被害者を「心からお祝い」したとネットで拡散 ⇒ 実際には… (ハフィントンポスト) http://www.huffingtonpost.jp/2018/01/24/edano-katsuzetsu_a_23342922/ ・なぜ、どう考えてもおかしいと思えるもので炎上するのか。これは立憲民主でも自民党でも変わらない。事故で被害に合った人を嬉しいと思う人はいない。故に何らかの心理的反応によって間違えたのではない。 →本当は思っていることを隠して逆のことをいったりする場合、思わず言葉に出てしまうことがあるが、これはそういった案件とは全く違うということ。 ③ 子どもたちを狙う危険な動画コンテンツ「エルサゲート」って何だ? (エストニア共和国より愛をこめて) ・全然知らなかった現象なので、ブログ主さんに感謝。目的が全くわからない。 →中国でも問題になってる http://j.people.com.cn/n3/2018/0123/c94475-9418899.html ④ 洗剤を食べる「Tide Podチャレンジ」が少年少女の間で大流行、専門家が警鐘を鳴らす (GIGAZINE) ・確かに子供がみたらうまそうと思うかもしれないが、昨今おいしいものは山ほどあるので、子供はむしろ禁止されるからこそ食べたいのだろう。 →最終的にはメーカーがデザインを変更すべきなんだろうけど、多分このデザインだから売れる、という側面もあってやめられないんじゃないかなー。 ⑤ 「HomePod」がようやく発売へ--出遅れたアップルに残されたチャンスとは (CNET JAPAN) ・値段も高いし、発売されてみないとなんともいえないなあ。 ■番外編 犯罪発生 AIで予測 神奈川県警が全国初 東京五輪までの運用目指す (産経新聞) ・どこまでAIを活用するかわからないけど、アメリカではアルゴリズムに偏見が混じっていたせいで大問題になったりしてる。詳しくは僕の記事を参...

[荒川強啓デイ・キャッチ!]ラジオ元ネタ(2018.1.23)

今週の元ネタ。 ① 超人気アダルトサイトが2017年をまとめた統計レポートを公開、日本人ユーザーのフェチも明らかに (GIGAZINE) ・詳しい統計情報はリンク先からたどれます。あまり表に出てこないアダルトの統計情報は貴重かと。 ② 20年間収監中の受刑者が仮釈放生活をVR体験 社会復帰を目指す (moguraVR) https://vrscout.com/news/inmates-vr-prepare-life-on-outside/ ・VRで認知症患者の世界を体験したりと、VRは「体験」がキーワード。 ③ スマートスピーカーが、テレビ、スマホなどから時間を奪いメディアの主役に! (ヤフーニュース個人) [リンク先PDF注意] http://nationalpublicmedia.com/wp-content/uploads/2017/10/The-Smart-Audio-Report-from-NPR-and-Edison-Research.pdf ・PDFが読みやすくてありがたい。読むのに時間かからなかったのでおすすめ。 音声認識技術の重要性については、昨日のラジオで少し話したので気になった人はきいてね。 https://www.tbsradio.jp/dc/ ここからきける。 ④ Facebook陣営がソーシャルで圧倒的人気も、日本はLINEが1位――App Annieの2017年アプリ市場調査 ( TechCrunch Japan ) ・レポート本体は記事からリンクがあるのでそちらから。 ⑤ 結婚などのライフイベント、報告は直接よりもSNSで--米調査 (CNET JAPAN) ・こちらもレポートは記事からリンクでてます。 ⑥ Alexaスキル人気ランキング発表 1位はradiko、2位はあのキャラ (IT Media) ・2位がピカチュウトークなところ、まさに音、会話、重要だな、という感じ。 扱わなかったけど、重要だと思ったのはこちら ビジネス向けチャットツールは、なぜ「次に来る大物」とされるのか──テック企業の競争が激化する理由 (WIRED) Slackの話題なのだけど、いずれSlackについては番組でやりたい。 以上です。 ...

今週のラジオ元ネタ(2018.1.16)

この前後輩から、 ラジオ(デイキャッチ) で話した内容や、それに関する記事をブログでまとめて欲しい、と言われた。 そういえば、Twitterでは元ネタの記事を発信しているものの、ブログで簡単に残しておくのもいいかと思った。 なので、以下今週気になった記事を ① YouTube、樹海で遺体撮影YouTuberに言及 対応への遅れに批判も(ねとらぼ) 結局アカウントの削除が行われないなら、プラットフォーマーとしてのYouTubeの責任は問われるよね。 ② 「出会い系アプリの女性がプログラムだった」という男性の悲痛の叫び、被害総額は170億円超(gigazine) チューリングテストがこんなところで行われているとは。。。 ちなみに、チャットボットがメンタルヘルスに有効なことは結構しられている。 https://wired.jp/2017/07/31/woebot-chatbot-therapist/ ③ iPhoneのヘルスケアアプリが強姦殺人事件の重要な証拠として使用される iPhoneやスマートスピーカーが犯罪の証拠になる社会において、セキュリティやプライバシーはどのように扱われるようになるのか。 ④ 国内の言論統制が目的か? ベトナム人民軍のサイバー部隊「Force 47」(前編) 後編はこちら 中国以外のアジアの言論統制問題など、日本人はあまり知らないけど重要。 ⑤ フェイスブックがニュースを排除する:2018年、メディアのサバイバルプラン(その3) 朝日新聞の平さんの記事。いつも大変参考になる。 フェイスブックがニュースより友達の投稿を重視するようになったことと、同時にメディアはSNS拡散より課金に移行するのかどうかが問われる。さらに、課金ユーザーと無料ユーザーで(フェイクニュースなど)情報格差が生じるのではないか、という問題。パブリッシャーが今後どうするのかは悩ましいところ。 ⑥ スマホ「ながら運転」厳罰化へ 事故なくても懲役6月以下 道交法改正案 (1/2) これは当然の方向だよね。 ⑦ 致死性の感染症の急増が実は人工甘味料「トレハロース」によって引き起こされていたことを示す研究結果 これ、全然知らなかった。 ⑧ Netflixが初めての トークショー番組を開始、最初のゲストBarack Obamaはソーシ...

声が届かなくなった世界の中で。

普段ラジオであまり声を荒げたり強い言葉を使うことは(敢えて面白く話すとき以外は)ない。とはいえ、今日は昨今議論になっている水原希子氏に関する話題で「クズ」などの単語を使った。 別にこうした言葉を使っちゃいけないとは思わない。しかし一方で僕が気になっているのは、強い言葉で批判を強めれば強めるほど、数年前とは逆に「本当に届けたい」相手には声が届かなくなっていることだ。 もう3、4年前になるが、当時の僕は、今後は「感情」がテーマになると思っていた。当時はFBが特定のユーザーのタイムラインに、ポジティブ/ネガティブな投稿をどのようにみせるかを調整することで、その人の感情が変化するといった実験を行っていた時期だった(実験自体は2012年で、それが発覚したのが2013年か14年だった)。簡単にいえば、無意識や直観、また感情的な言葉が人を引きつけることが注目されていた時期だった(ジョナサン・ハイトなどの著作をよく読んだ)。実際それから、今日のようにより感情的な議論が増加した(炎上はその頃からあったが、今のような「炎上芸」のカテゴリーないしタグ化はそれほど世間に浸透していなかったように思う)。 多くの感情的フックを利用することで人々にある種の動員を促進し、自分の主張を支持させること。これがそれなりに効果があったのがほんの数年前。いわゆるノンポリや、政治的意見を模索している人たちに対して、感情的な(かつ論理的でもある)言葉は確かに意味があった。 でもそれから時間が立った今、強い主張は(その内容がどうであれ)一種の「炎上芸」とみられ、意見を異にする人にはあまり言葉が響かなくなっているように感じる。無意識や直観を用いる方法論は今後も研究が進んでいくが、感情的な発言を通した動員が成功するのは、特定のクラスターに限定されるようになった。「炎上芸」がタグ化されたことで、言葉の「内容」ではなく「形式」に人々が敏感になったが故に、形式に飽き飽きし、内容にも関心を払わなくなりつつある。どれだけ感情的で論理的な言葉であっても、強い言葉に辟易しているように思う。 強い言葉を使えば使うほど声が届く範囲が限定される一方、ソフトな響きの言葉もまた届くことがなくなった。こうして言葉が他者に届かず、社会の分断化が極端に進行しているのが現在だ。師匠の宮台先生が『正義から享楽へ...

Yahoo!ニュース個人に記事を投稿しました。

昨年から更新が滞っていたYahoo!ニュース個人に投稿した。 クラウドファンディングに個人情報を特定する「doxing(晒し)」が登場ーー市民が社会を滅ぼす恐れも (Yahoo.2017.8.23.) これは先日TBSラジオ「 荒川強啓デイ・キャッチ! 』で話した内容をさらに詳しく解説したもの。doxing=晒しは日本でも行われているけれど、doxingのクラウドファンディングサイトをはじめてみたときは、戦慄した。ああ、歯止めがきかなくなったのだと直観して、いたずらにサイトをみせては二次被害になると思い、リンクはつけなかった。 恐ろしいことに、例えばBaked Alaskaはdoxingされ、それに対抗して彼を支援する側がdoxing攻撃者を特定しようとしている。そういえば先日みたNHKの『映像の世紀』では、ガンジーが非暴力闘争を唱える一方、ボースが武装闘争路線に転向したことでそれぞれに道がわかれた事実が説明されていた。 確かに白人至上主義は問題だけれど、それにdoxingで対抗するのはあまりにも武闘派すぎるわけで、暴力はこうして発生してしまうのだと、それも市民の側の自発的な暴力として発生することをまざまざと見せつけられた感じがした。 僕の好きな漫画に『デビルマン』がある。主人公は偶然悪魔の力を得るわけだが、人間のためにその力を使って戦っている。だが物語の終盤で、悪魔に怯えた人々は主人公の家族や友人達を恐怖から迫害する。群衆と化した人々はヒロインを惨殺し、それをみた主人公が、悪魔はお前たち人間だ、と怒るシーンがある。 近代社会は市民と同時に「群衆」を登場させた。群衆は単に群れる人々、の意味に留まらず、理性的個人としての人格を失った、恐ろしい暴徒の集合のように見做される。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いと言うが、一度悪が措定されると暴力が容易に肯定されるわけだ。これは他国の状況を涼しい部屋でキーボードを打つ自分にも適応される原理であり、状況が変われば僕自身も群衆権力に取り込まれてしまうのではないか、と思ってしまう。 根本的な解決策が見いだせないのだけれど、もしかすると対立を無理やり解消するのではなく、むしろ右翼左翼にかかわらず、ストレスを発散できる場所を、いかに他者に迷惑をかけない形で構築するか、という観点も必要なように思う。かつてネットはそう...

自転車に傘、中国のシェアサービスとマナーのゆくえ。

中国では自転車シェアビジネスが盛況であると耳にすることがよくあるが、最近は傘のシェアビジネスがはじまっているそうだ。 自転車シェアは数千円の保証金を最初に支払えば(退会すると返金される)、1時間10円程度で自転車が乗れるというもの。スマホで簡単に決済できるのと、特定の自転車置き場に限定されず、街中に自転車を放置できることが特徴(日本に比べて流行るわけだ)。大都市では数百万台のシェア自転車がそこらに放置されているので、どこからでも簡単に自転車を乗って簡単に放置できる。その値段を考えれば、電車に一駅乗るよりも自転車の方がはやかったりする(詳細は ここ など)。 シェア自転車はMobikeとofoが市場をほぼ独占しており、それを支援するのがそれぞれテンセント(Wechat)とアリババ(アリペイ)であり、 自転車シェア業界もこの2社が争う形だ 。 こうして人気のシェアビジネスに、今度は傘のシェアサービスを「U Umbrella」というスタートアップ企業がはじめたところ、3ヶ月で30万本の傘が盗まれたというニュースが飛び込んできた。 GigaZiNE や GIZMODE といったウェブニュースサイトのほか、イギリスの ガーディアン も報道している。 報道によれば、19元(約320円)の保証金を支払えばアプリに傘をアンロックするコードが送られ、30分0.5元(約8円)で傘が利用できるとのこと。便利だと思う一方、傘の未返却に関する罰則がないことなどもあり、上述のように多くの傘が行方不明になっているという(傘にはGPSがついているので捜索できるだろうが、それも費用がかかりすぎるだろう)。それでも創業者は2017年中に3000万本の傘を導入するとのこと。強気ですなあ。 ◾シェアビジネス流行の背景 ところで、僕は中国のシェアビジネス流行の背景に、日本とは異なる2つの要因をみる。 ①スマホの決済システム スマホの決済システムについては僕のウェブ連載でも指摘してきた( 「電子決済の普及で中国人が「道徳的」に?ーー透明化する個人情報が孕む諸問題」Wedge,2017.6.6 )。 中国ではQRコードを利用することで読み取り装置不要の決済機能が充実しており、人々はアリババの「アリペイ」とテンセントの「Wechatpay」のふたつを利用している。これらは手数料が(...

インフルエンサーと広告のあり方[デイキャッチ補足]

2017年6月13日の『荒川強啓デイ・キャッチ!』で話したテーマはインフルエンサーについてだった( 音声はこちら ) インフルエンサーは文字通り影響を与える人のこと。インターネット,SNSといった双方向メディアの影響もあり、私生活のわからない銀幕のスターよりも、読者モデルのように一般人の要素の強い人々が人気を得ている昨今(会いにいけるアイドル)。インフルエンサーは投資対効果も高くSNS界隈で需要が加速している。例えば以下の記事 「 インフルエンサーマーケティングの現状:要点まとめ 」(DIGIDAY,2017/6/7) とか、わかりやすいところだと以下 「「インフルエンサー」とは?〜今さら人に聞けないマーケティング用語をおさらい!」( ソーシャルメディアマーケティングラボ ,2013/6/12) イギリスではゾーイと呼ばれる女性の ユーチューブチャンネル登録者が1000万人 を越えて、少なくともユーチューブだけで 月収が5万ポンド(71800ドル) なんていうニュースもあったり。中国ではネットセレブをは「ワンホン」と呼ばれ、モデル出身の女性はCtoCのショッピングサイト「タオバオ(淘宝網)」で 記録的な売上を叩き出している 。 ついでに述べておけば、中国ではLINEのようなメッセージングアプリ「Wechat」で自らチャンネルを開設し、生配信ができる(日本のLINE LIVEのようなもの)。そこではユーザーから投げ銭ができるシステムになっており、アイドルなどが登場しているようだ。投げ銭は金銭目当てに過激な行為に走ったりすることもあり、また投げ銭を通して主に年少者の配信者に犯罪行為をそそのかす輩が出たりと、問題も多いと思うのだけれど、とにかくこうしたものも流行っている(日本でもドローン少年問題が話題になったが、そのとき投げ銭システムが議論された)。 日本でもLive shopというアプリが公開され、インフルエンサーが スマホでみえる動画で商品紹介をしている 。またインフルエンサーが行う商品のブツ撮りサービスをはじめたところ、 プロよりも高価格にもかかわらず人気が殺到している という話もある。どこまで続くかはわからないが、まさに素人革命というか、より身近な存在が求められていて、ますます半径5メートルの世界をいかに快適にするか...

中国のサイバーセキュリティ法について[デイキャッチ補足]

6/6日放送のTBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』では、6/1日施行の中国サイバーセキュリティ法について扱った( 詳しくはサイトから音声をきいてください。 でも一週間で消去されるので、 TBSラジオクラウド ならもう少し聞けるかも。) 元ネタとなった記事は以下を参照 「中国、ビッグデータ統制 持ち出し規制の新法施行」 (日経、2017/6/2) 「中国が主張する「サイバー主権」って? 言論統制強化へ「セキュリティー法」施行」 (産経、2017/6/1) 「中国、サイバーセキュリティー法施行 曖昧な中身に企業困惑」 (CNN,2017/6/2) また放送後(放送日?)にもより 詳細な記事 も出てます。 法律の 原文はこちらから 。グーグル翻訳を使えば中国語がわからなくともなんとなく雰囲気は伝わるかも。 またこちらの法律、106社の企業にアンケートしたところ、 9割以上は内容をよく知らない 、というニュースも出ています。 番組でも述べた通り、この法律はプロバイダーが政府の要求に応じてユーザーの個人情報を提供しなければならなかったり、58条には政府によるインターネットシャットダウンを合法化するなど、大きな問題になっています。 同時に、海外企業はユーザーデータを中国内に保存しなくてはならず、データ越境に際して許可制になります。さらに当局が判断すればそうしたデータを海外企業は当局に開示しなければならなくなりました。これら技術協力はその表現が曖昧で、何をどの程度要請されるか、現状ではわかりません。だからこそ海外企業は不信感を募らせています。だって、曖昧だからこそ目をつけられたら何されるかわからないじゃないですか。曖昧な表現は自粛や萎縮を呼び込むということです。 中国は世界経済の重要なプレイヤーですから、企業活動する上でこうした障壁は大きな問題です。ニューヨーク・タイムズ紙などをはじめとして、欧米では日本以上にこの問題を大きく扱っています(むしろ日本の扱い、ちっちゃいなあ)。 「China’s New Cybersecurity Law Leaves Foreign Firms Guessing」 (NYT,2017/5/31) 中国は数年前から海外のIT企業を押しのけたい、という意向があったので、このニュー...

[Wedge]ウェブ連載を更新しました。

2013年からWEDGEで連載している記事を更新しました。 電子決済の普及で中国人が「道徳的」に? 透明化する個人情報が孕む諸問題 ややタイトルが釣りっぽいですが、これは以前デイキャッチでも話した内容です。アーキテクチャが人々の道徳に介入する、という古典的な問題がある一方、問題を批判するだけでなく、リバタリアン・パターナリズムの側面から物事を捉えることは可能か、という問いを立てました。 字数的に最後の論点は提示しただけに終わってしまったのですが、別の問題を使って深掘りしたいテーマです。

ウェルク後の検索事情とヘルスケア大学について[デイキャッチ補足]

5/30日のTBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』でウェルクについて扱った( 音声はこちらから )。 Twitterでもつぶやいたけれど、元ネタとなった主な記事は以下 「WELQの方がマシだった? ネットの医療情報は今、どうなっているのか」 (BuzzFeedNews,2017/5/24) 「 WELQ退場から半年。事件は医療・健康系検索結果をどう変えたか? 」(web>SEO,2017/5/24) 「 Googleは情報の正しさを判断するようになるのか? 偽ニュース対策で検索アルゴリズムを更新したGoogleのベン・ゴメス氏に聞く 」 (web担当者Forum,2017/4/26) 放送内容を簡単に言うと、内容に問題のある医療情報サイトはなくなっておらず、それどころか検索内容によってはより問題あるサイトが検索に表示されてしまうというものでした。 グーグル様をもってすれば検索エンジンのアルゴリズムなんて簡単に変更できるんじゃないかと思っていたけれど、記事を読む限りは難しそうです。もちろんグーグルもビジネスでやっているわけだから、ある程度いじれないアルゴリズムもあるだろうが、それでもピンポイントで知りたい情報になればなるほど不正確な情報にたどり着く可能性が上がるという指摘は、グーグルを利用する僕達にとっても重くのしかかる課題だろう。バズフィードの記事にあるように 「信頼性を重視しすぎると有益な情報が探せなくなり、ユーザーの要望を重視しすぎると健康被害をもたらす情報がでてしまう」 という問題は、我々にとっての課題だと思われる。 とはいえ、やはり不正な情報を掲載するサイトが、広告費を使ってバンバン不正情報を世間に垂れ流すのが一番の問題だ。そこにはグーグルのようなプラットフォームの責任も重大だろう。お隣の中国では、検索大手のバイドゥの上位に上がった詐欺集団に騙され、命を落とした被害者が出てしまった事件もある( 「 男子大学生の死が投げかけた波紋--百度と中国式検索の信頼性揺らぐ 」 )。 昨年のフェイクニュース問題に端を発するネット情報の『正しさ」をめぐっては、一層プラットフォームの責任が問題視され、FBもグーグルも対応を急いでいる。 ◾「ヘルスケア大学」について 補足というより結論を再び述べたような投稿になって...

テスト兼初投稿

塚越健司です。 ほぼ更新が滞っていたブログに代わって、こちらでブログをはじめました。 それに合わせて HPもつくってみました 。 ウェブで発信する場所はふたつあって、ひとつは2013年からやっているWEDGEの 「 サイバー空間の権力論 」という連載。もうひとつはあまり更新できていないYahoo!ニュース個人「 塚越健司の情報社会学、社会哲学の視点から 」というのもあります。 ここでは毎週レギュラーでコーナーを担当しているTBSラジオ『 荒川強啓デイ・キャッチ! 』で扱ったニュースの補足や書評など、記事にするほどでもないけど Twitter で一言つぶやくには足りないものを発信していこうと思います。 どれくらい書けるかわからないけど、いつもなんとなく思っていることを、生焼けでも発信できたらいいなと思ってます。 ではでは、まずはこんな感じで。HPもブログも順次アップデートしていくので、まだ簡素なものだけどより充実したものにしていきたいなと思います。